慢性疲労症候群入門

慢性疲労症候群 & 線維筋痛症を管理する方法
出典:Managing Chronic Fatigue Syndrome and Fibromyalgia: 2010 edition
on ME/CFS & FIBROMYALGIA Self-Help

第1章 慢性疲労症候群と線維筋痛症

慢性疲労症候群(CFS)あるいは線維筋痛症(FM)といった長期にわたる疾患に罹(かか)ると、生活の習慣がすっかり変わってしまい、進むべき明らかな道が見つからない新天地に入ったように感じるかもしれません。この困惑するような状況のせいで、あなたはどうすることもできないと思ってしまいます。しかし、疾患から生活のコントロールを取り戻すため、そして健康を改善するためにできることがたくさんあります。この本はあなたにどうしたらいいのかその方法を示します。この本の中のアイデアを使えば、CFSや線維筋痛症を管理する計画を立てることができます。

この本の第1部の最初の一歩は、自分の置かれた状況を理解します。CFSと線維筋痛症の重要な三つの側面から見ていくことにします。

おそらく、CFSあるいは線維筋痛症で最初に具合が悪くなったとき、あなたは短期間の疾患に罹って、それが長引いているだけだと考えたでしょう。しかしながら、ある時点で、あなたは自分がすでに新しい領域に入ってしまったことに気づきます。自分の問題が短期間の疾患と全く違うものであったという事実に直面します。短期間あるいは急性の疾患は、治療するか、あるいは時間がたつとふつうは終わる一時的な問題です。

CFSおよびFMは生活を一時的に中断しません。それどころか、両疾患はいつまでも続きます。短い中断のあとに前の生活を再開するどころか、あなたは慢性症状と制限に適応しなければならない事態に直面します。そして、もしあなたが多くのCFSを持つ人たちや多くの線維筋痛症を持つ人たちと同じであるなら、疾患が生活の大半を方向付ける中心となります。症状があるにもかかわらず無理をするといった急性疾患に使う戦術は、事態を悪化させるだけだということも分かったかもしれません。この本は、別のタイプの疾患を管理するための技能を教えます。

二つ目に、CFSおよび線維筋痛症は活動を制限して症状をもたらし、それが続くだけでなく、包括的な影響を及ぼして生活のさまざまな部分に関わります。仕事をする能力、人間関係、気分、将来の夢や希望、そして自我意識にさえ影響します。CFSあるいは線維筋痛症のような長期にわたる疾患を抱えた生活は、症状を管理するだけではないということです。

この難題を複雑にしているのが、CFSや線維筋痛症と生活の諸要素の相互作用です。(下図を見てください)。例えば、CFSやFMは活動を減らします(CFS/FMから活動に向く矢印)。しかし、もし体が許容できないほどの活動をしようとすれば、より強い症状を経験することになります(内側を向く矢印)。

疾患と他の要因との相互作用

疾患と生活の諸要素の相互作用

相互作用の同じパターンはストレスについても言えます。そもそも毎日症状を抱えて生活すること自体がストレスになります。そのうえ、疾患はしばしば、経済を圧迫し、人間関係を複雑にし、先行きを見えなくします。このようにして、疾患はストレスを増やします。しかし、今度はストレスが症状を悪化させることがあります。適度のストレスでさえ、症状を大いに強める可能性があります。

もう一つ例を示すと、疾患と感情の相互作用があります。心配、怒り、憂鬱、悲嘆といった感情は、重い疾患が引き起こしたさまざまな中断や先行きの不透明さに対する反応であり、ふつうで無理からぬ感情です。自分が重い病気であることに対するこれらの反応は、CFSと線維筋痛症では特に強いかもしれません。なぜなら、この二つの疾患は、感情を以前より強くして抑制しづらくするからです。

感情の強さは悪循環を生み出すことがあり、疾患が感情を強めて、今度は感情が症状を強めます。例えば、人は憂鬱になると痛みに耐える力が弱くなります。また、痛みは怒りで強まります。なぜなら、怒りはたいてい筋肉の張りを引き起こすからです。感情が強めた症状は、今度はより多くの心配や悲嘆を引き起こすかもしれません。

疾患と人間関係、そして疾患とお金にも似たような相互作用があります。誰かが長期間病気だと、しばしば人間関係が悪くなります。というのも病人は居心地が悪くて元気がなく、そして他の人たちも生活が中断するからです。しかし、理解されていると思えない、あるいは見捨てられるのではないかと心配するといった人間関係の問題が新たなストレスを生み出し、今度は症状が悪化します。疾患は収入を減らして家の経済に影響します。経済的な悩みはストレスを増やし、そのことが結果的により強い症状に結びつきます。

要約すると、CFSおよび線維筋痛症は包括的に影響を及ぼして生活のさまざまな部分に関わります。両疾患は単なる医学的な問題にとどまらず、疾患を管理する計画は症状に対処するだけでなく、そのすべての影響に対処しなくてはなりません。

三つ目に(最も重要です)、慢性疲労症候群および線維筋痛症は、疾患にどう対応するか、その対応の影響を受けます。一例は、疾患が課した制限の受け入れ方です。両疾患に共通する一つの対応として「プッシュ・アンド・クラッシュ(push and crash)」の傾向があります。症状が強いときと休息している期間を行ったり来たりします。症状が強いと寝ます。症状が徐々に治まってくると活動を再開しますが、すぐに症状が増えてまたベッドに逃げ込みます。第3部で説明するペーシングが選択肢の一つを提供します。ペーシングを使って、プッシュ・アンド・クラッシュをより安定した予測可能な生活に替えることができます。

これまでのところ、CFSも線維筋痛症も治療法がありませんが、どちらも疾患への対応が症状や生活の質に大きな効果を及ぼし、しばしば医療より大きな効果があります。 Charles Lapp  医師が言うように「主治医ができることには限界があります」。これらの疾患を抱えながら回復するカギは「疾患を受け入れることと、生活習慣を変えて疾患に適応することであり、医療はそれにとうてい及びません」。

この本に載っている自己管理の取り組みは、改善を促進するための対処手段を提供し、場合によっては回復することさえあります。来る章は、気分が良くなるためにあなたのできる多くのアイデアがあります。それらの戦略は苦痛と不快を軽くし、いっそうの安定をもたらし、そして肉体的・精神的な苦痛を和らげるのに役立ちます。そして我々がクラスで何度も見てきたように、改善をもたらすかもしれません。

更新日:2017年12月10日

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