慢性疲労症候群(CFS)入門

慢性疲労症候群 & 線維筋痛症とうまくつきあう方法

出典:Managing Chronic Fatigue Syndrome and Fibromyalgia: 2010 edition
on CFIDS & FIBROMYALGIA Self-Help

第26章 喪失を深く悲しむ

喪失を受け入れることはCFSと線維筋痛症の最大の課題の一つです。この二つの疾患は、例えば、体がコントロールできなくなる、友人がいなくなる、価値ある活動ができなくなるなど、多くの深刻な喪失をもたらします。病気の人々は多くの場合、仕事を辞めるように強いられ、収入、親交、やりがいを失います。そしてしばしば、人々は夢を諦めなければならなくなり、心に描いていた将来を失います。つまり、我々は、以前の自分と、なりたいと望んだ自分の両方の喪失を経験します。

喪失が隅々まで行き渡ると、我々に非常に手ごわい課題ができます。その課題とは、多くのものが奪われたとき、希望を持ち続け、人生に新たな意義を見いだすことです。この章ではどのように喪失を克服するべきか論じます。次の章では、喪失を乗り越えて新しい生活を築き上げるための方法を記述します。

喪失に対する反応

喪失は悲嘆という情緒反応を引き起こします。悲嘆はふつう、愛する人の死を連想させますが、悲嘆はどんな喪失のあとにでも起こり得ます。喪失に対する反応は、 Elizabeth Kubler-Ross が著書 On Death and Dying (『死ぬ瞬間』)の中で説明した、有名な、死の「段階」の観点から時々論じられます。否認、怒り、取引、抑鬱、受容です。しかしながら、ほとんどの人々は、「段階」という用語によって暗に示されたような、整然とした進行がありません。むしろ、悲嘆は、もっと個別のプロセス(過程)で、幾つかを経験するだけかもしれません。必ずしも Kubler-Ross が説明するすべての感情を経験するわけではありません。また、人は何度も同じ感情を経験するか、あるいは同時に2つ以上の感情を持つかもしれません。

悲嘆を克服すると二重の恩恵を受けることができます。重要な心理的問題が解決されるだけでなく、身体的問題でも困難を切り抜けられるかもしれません。深く悲しむことは症状の突然の悪化と関係があります。実際、喪失の克服が健康に与える影響は、エイズで親友を失ったHIVポジティブの男性たちの研究で明らかになっています。調査で、喪失に意義を見いだすことができた男性たちは、翌数年で彼ら自身がエイズで死ぬリスクが際立って低かったことが分かっています。

否認と疑惑

CFSあるいは線維筋痛症の診断結果はしばしば、苦しみに名前をつけて安堵感をもたらしますが、この最初の反応にはショックと疑いが伴うかもしれません。なぜなら、CFSあるいはFMという診断結果は、完治するための治療法がなく、一貫した効果的な治療法がない慢性疾患にかかっている、と言われるのと同じだからです。よく見られる反応として、忙しい生活を送り続けて診断を無視すること、あるいは医師巡りをするか、特別な治療あるいは食事療法を試して治療法を探すことがあります。

否認は適応できる反応かもしれません。あなたは、変わってしまったすべてと、疾患がもたらす不安に徐々に適応することが可能です。否認は、生活が変わってしまって、もう元に戻らないかもしれないと言われたあとに希望を持ち続ける方法です。しかし、もしこの反応から抜け出せなくなったら、自分の置かれた状況に現実的に直面できないでしょう。特効薬を求めて繰り返した数々の不成功の試みは、無力感と絶望感をさらに強めるかもしれません。しかし、症状をいくらかコントロールして、ペーシングやストレス軽減のような自主管理戦略を使えば、無力感をコントロールの経験に置き換えることができます。

恐れと心配

恐れと心配は、疾患がもたらす予知不可能さと不確実性へのよく見られる反応です。将来待ち受けていることが分からないこと、自分の生活がコントロールできないという感じは、大きな不安を引き起こします。

自主管理プランを考え出し、それを実行すれば、幾つかの方法で心配に対処できます。第一に、しばしば薬と組み合わせて、ペーシングを使えば、病状が安定し、それによって不確実性を予測可能性に置き換えることができます。第二に、恐れはふつう筋肉の緊張に伴って起こるため、自主管理プランにリラクセーション法を含めれば、感情と体の反応との間のつながりを断つことができます。第三に、不安はふつう否定的考えを引き起こすので、心の中のつぶやきを注意深く聞いて、それを恐れず、いっそう現実的なものに変えれば、不安を軽減できます。(心の中のつぶやきの詳細については、第31章を見てください)。第四に、自分の疾患について学べば、心配事を事実に置き換えられるので、役立つことがあります。例えば、CFSあるいは線維筋痛症のどちらもふつう進行性でなく、CFSあるいはFMの人々の多くが改善することを知ることで、将来についての恐れの幾つかが和らぐかもしれません。(さらに多くの戦略については、第19章の不安と心配の議論を見てください)

フラストレーションと怒り

フラストレーションと怒りは、喪失と、どうすることもできないものに生活を変えられた経験とに対してよく見られる反応です。これらは、はっきりした理由もなく生活が変わってしまい、生活がいっそう困難になったという認識を尊重する率直な感情です。また、フラストレーションは不安感によって引き起こされることもあります。

怒りを感じるのは当たり前ですが、生活のコントロールを取り戻そうと努力する動機になるか、あるいは他の人の役に立つことに打ち込むようになるならば、プラスの効果となり得ます。しかし、怒りが、あなたを助けたい人々、あるいはあなたが頼りにする人々を立ち去らせる方法で表現されるならば、怒りは破壊的な感情になり得ます。激怒したり、どなったり、冷酷でいたりして怒りを表すことは、人の感情を傷つけます。諦めも非生産的な反応です。たとえあなたが何も言わなくても、冷酷でいる怒りの表現は敵対的な行動を取るのと同じです。あなたは、例えば、配偶者としゃべることを拒むかもしれません。

症状をコントロールすれば、フラストレーションと不安を軽減することができます。例えば、規則的な休息を取るようなペーシング戦略は症状をさらに安定させ、それによって重い症状と寛解期の間の変動が小さくなり、いらいらをいくらか抑制できます。また、行事の前に休息を取れば、あなたは行事に参加しやすくなります。健康ログ(日誌)をつければ、自分の症状のパターンが分かり、何が症状をひどくするのか明らかになります。また、人に理解されることでフラストレーションを減らすことができます。支援を確立するアイデアについては、人間関係のセクションを見てください。

罪の意識

過去を振り返ってみて、病気になった自分を責めるかもしれません。病気になるという結果をもたらした自分にミスはなかったか自分の過去を詳しく調べるかもしれません。「もう少しもっと体を大事にしさえすれば」「もう少しストレスをよく管理さえしたならば」あるいは「もう少しもっと体に注意を払っていたならば」のようなことを、自分に言うかもしれません。しかし、実際は、CFSあるいは線維筋痛症の病因はまだ誰も知りません。遺伝的感受性のような我々の自由にならない因子が、両疾患で主要な役割を果たすということが明らかになる可能性が高いです。

我々は、往々にして病気になった人を責める社会で暮らしています。きちんと食事し、運動して、正しい考え方を持てば、疾患を避けられるという通念があります。しかし、実際は、自分の遺伝子はコントロールできず、我々の理解できない多くの力に従っており、我々は傷つきやすいのです。何かを自分で学ぶために病気になりたかったという考えを受け入れないでください。そのような考えは、ただ慢性疾患の苦痛を大きくするだけです。

また、働けないか、あるいは以前と同じように家で仕事ができないことで、あなたは罪の意識を感じるかもしれません。生産性を強調していう社会に暮らしていて、以前ほど多くをしていないという罪の意識はよくあることです。自分の置かれた状況を現実的なやり方で見るのが適切です。あなたが一人暮らしでなければ、疾患のせいで、おそらく、家族で責任の再分配をしたはずです。しかし、好きで病気になったわけでないこと、疾患が自分のすることに現実の制限を課したことを思い出すことも役立ちます。

罪の意識を、より自分自身を大事にする動機にすれば、これから先役立つこともあります。しかし、自分の疾患を個人的なしくじりと考えるならば、罠(わな)となり得ます。以前がどうであれ、あなたは、たった今から疾患をコントロールできます。戦略を使ってください。十分な休息を取る。運動する。症状を緩和するために薬を服用する。ストレスを軽減するためにリラックスする。支えとなる関係を築く。妥当な責任(大きくない)を受け入れる。生活に楽しいことを取り入れる。新たな興味を見いだすなどなど。

悲しみと抑鬱

抑鬱と悲しい気持ちは慢性疾患でよく見られます。これらは喪失、不安感、制限、症状の不快感に対する自然な反応です。抑鬱は、心を閉ざすことによってさらなるストレスあるいはトラウマを少なくする反応であり、すでに起こったことを処理するのに時間をかけます。抑鬱は、CFSあるいはFMと診断されるまでに長く悩んだことで引き起こされるかもしれません。長年にわたる不適切あるいは無神経な治療が、絶望感を生じさせるかもしれません。

抑鬱はふつう、時間とともに和らぎます。もし抑鬱が続くならば、あなたは絶望感を抱き、無気力でしょう。幾つかの戦略が役立つかもしれません。第一に、以前の章で述べた自助戦略は、あなたが先へ進む助けとなり、すべてが絶望的であるという考えを否定します。第二に、自分の考えがさらに現実的・希望的になるようにするため、あなたは自分の考えを再構成する(別の考えに変える)ことに取り組むことができます。(あなたの考えを変えるための3ステップの手順については、第31章を見てください)。第三に、臨床的鬱病に悩むCFS患者と線維筋痛症患者がかなりいるので、専門家の指導と投薬が役立つかもしれません。

受け入れ

喪失を克服するにはしばしば数年を要します。終点は受け入れです。それは生活が変わってしまったということを認めることです。もしかしたら永久に、あるいは長期間にです。受け入れは、以前の自分の生活を諦めることを意味し、そしてまた、すでに想像していたような将来の生活を諦めることも意味します。これは過去の自分にさようならを言うことを意味します。

受け入れには、以前と比べて異なった生活を送る必要性の理解と、新しい生活を送る意欲も含まれます。この考え方は、回復したCFS患者 Dean Anderson によって要約されました。彼はある種の受け入れが回復へのカギであったと言いました。彼はそれを諦めではなく、「この病気の現実と、そしてたぶん今後一生、ふつうの人とは違った暮らしをする必要があるということの受け入れ」と説明しました。彼にとって、受け入れはまた、「生産的であるため、そして不慣れで厳しい状況下で充実感を見いだすための」方法を見付けることも意味します。

線維筋痛症患者の Joan Buchman は、彼女の記事 “How I Created a Good Life with Fibromyalgia” (「線維筋痛症を抱えて豊かな生活をする方法」)の中で、受け入れの同じようなプロセス(過程)を概説しました。彼女は、線維筋痛症にかかることを選んだわけではなかったけれども、どのように疾患を抱えて生活するべきかについては本当に選んだと書きました。彼女は、ライフスタイルを変えて症状を軽減させ、「私の多くの恵まれている点に焦点を合わせる」ことによって充実した生活を築き上げました。

CFS患者で作家の Floyd Skloot は彼の体験記 In the Shadow of Memory の中で、自分の受け入れの道のりを詳しく説明しています。回復するために奮闘して彼が分かったことは、「自分の体と、自分に課せられたこの制限から逃れることができないので、私はそれに慣れることを学ばなければなりません」ということです。彼は長い間に、「置き換えるために実行可能なこと」を認識したと言います。彼は、 Robert Frost の受け入れの記述「与えられるものを取り、それを自分のやり方で作り直してください」に感銘を受けました。 Skloot は次のように結びます。「私は(精神的に)打ちのめされているように思われるかもしれませんけれども……私が今までよりもっと良くなるための方法がたくさんあります……私は生まれ変わって、希望にあふれています」

Dean,  Joan そして Floydの 全員は、疾患の現実と、違う種類の生活を送る必要性を受け入れることに至りました。3人は改善の手掛かりを見付けました。疾患を受け入れることと、CFSあるいはFMが課した制限内で希望を持って生活する習慣を身につけることを組み合わせました。

悲嘆を切り抜ける戦略

あなたが悲嘆を切り抜ける助けとなるものは何ですか? 先に述べたように、自主管理プランを作成し、利用するのも一つの方法です。例えば、ペーシングはコントロールを高め、フラストレーション、無力さ、不確実性を、安定と予測可能に置き換えます。以下に、悲嘆を切り抜けるための八つの追加戦略があります。

1. 規則性。毎日のルーチン(いつもの手順)と、毎週のルーチンがあれば、安定感と熟知感が得られ、喪失によってもたらされた失見当識の感覚と不安感が打ち消されます。また、ルーチンは喪失を忘れさせてもくれます。“CFIDS, Change and Loss”の著者 Gail Cassidy は、「喪失の時期に、生活上で、不必要な大きな変更を何もしないでください。今ある不安定感と不安がさらに増すだけですから」とアドバイスします。

2. 問題解決。問題解決によって慢性疾患の感情に対処してください。自主管理戦略を採り入れて、その感情を引き起こす状況を改善します。

3. ストレス回避。疾患によってもたらされた多くの変化に適応しなければならないことはトラウマとなります。すでに感情的に負担をかけられている状況では、さらにストレスをもたらす人々と状況は避けたほうがいいです。 Gail Cassidy は「否定的感情を引き起こす否定的な人や状況に近づかない」ように勧めています。

4. 支援。家族や友人などに支援を求めてください。CFSとFMの他の人々からは、理解と、成功した対処のモデル(手本)をもらうことができます。専門家の助けは、あなたに生活観を与え、疾患がもたらした変化を受け入れさせてくれます。

5. 悲嘆の誘因を認識すること。悲嘆反応はしばしば、記念日などの特殊な状況によって、あるいは特定の人々によって引き起こされます。毎年、発病日ごろあるいは他の特別な日に感情が強まるならば、その時期に何か肯定的なことを計画してください。ある特定の人あるいは状況が、あなたを不安で、不快に感じさせるならば、それらに触れるのを制限することを考慮してください。

6. 喪失を認めること。一部の人々は、喪失を公式に公表することが役に立つと報告します。我々のプログラムの一人が友人たちにクリスマスレターを書いて、なぜ友人たちに連絡しなかったのかを説明しました。「私が病気になる前の機能レベルに戻るということはほとんどありそうになく、おそらく前より大きな制限がある生活を送ることに慣れなくてはなりません。その認識で酔いがさめます」。彼は、この手紙を書くことで、自分が制限を受け入れるのを助けられ、逆説的に、改善するという決意を強めたと報告します。

7. 悲嘆が循環的で長期間にわたると認めること。人生の段階を歩むとき、あなたは繰り返し深い悲しみを経験するかもしれません。例えば、友人たちが結婚するのに対してあなたが独身のままでいるならば、あるいは他の人たちが親になるのに対してあなたに子供がいないままならば、あなたが望んだ親になることができないならば、あなたが訓練したキャリアを持つことができないならば、あなたは深い悲しみを経験するかもしれません。

8. 自己憐憫(れんびん)に対処する。慢性疾患を持つほとんどの人が、時々自分を哀れみます。我々が経験する喪失とストレスを考えれば、我々が時々、感情によって圧倒される思いがすることは驚くにあたりません。以下に、自己憐憫を抑える四つの方法があります。

1. 自己憐憫が重病の一部であることを認める。 ちょうど症状が増減するように、感情も増減します。自己憐憫が起きていることを認めることで、その力のいくらかを和らげることができます。あなたは、「ああ、また自己憐憫だ」あるいは「私は今日、自分をかわいそうに思っている」というようなことを言うかもしれません。また、「前もこんなふうに感じて、いつも収まったので、たぶん今回も長く続かないでしょう」というように、慰めるように言うのが役立つことがあります。

2. 休息する。 強い感情は時には疲労などの症状によって引き起こされます。このような場合、休息が、身体症状と感情の両方を軽減するのに役立つかもしれません。

3. 他の人たちに連絡する。 電話、電子メールで連絡を取るか、あるいは直接会ってください。時には、ただ連絡を取り合うだけで気分が変わることがあります。またある時には、自分の気分を知ってもらうことも役立ちます。

4. 他の人の役に立つ。 自分の注意を自身から、家族、友人、あるいは他の人たちのために生活の中でできることに移してください。

参考文献

Cassidy, Gail. “CFIDS, Change and Loss,” CFIDS Chronicle 15 (Winter, 2002): 20-21

CFIDS and Fibromyalgia Self-Helpのウェブサイト http://www.cfidsselfhelp.org/ の Library ページにある Success Stories の Dean Anderson と Joan Buchman の記事を読んでください。

Kubler-Ross, Elisabeth. On Death and Dying. New York: Macmillan,1969.

Skloot, Floyd. In the Shadow of Memory. Lincoln: University of Nebraska Press, 2003.

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第25章 医師を見付けて、ともに取り組む  CFS & FMとうまくつきあう方法
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 第27章 新しい生き方を創造する

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