慢性疲労症候群入門

慢性疲労症候群 & 線維筋痛症を管理する方法
出典:Managing Chronic Fatigue Syndrome and Fibromyalgia: 2010 edition
on ME/CFS & FIBROMYALGIA Self-Help

第6章 疲労と闘う

疲労は慢性疲労症候群(CFS)の中枢症状であり、線維筋痛症(FM)を持つ多くの人たちにとっても大きな問題です。この「疲労(fatigue)」という言葉は、この二つの疾患を持つ人たちが経験する肉体的・精神的な極度の疲労を示すには、誤解を招きかねない言い方かもしれません。疾患がだるさや眠け、運動耐性の低下として現れたのなら、わずかな活動や、あるいははっきりした理由がなくとも疲労が引き起こされることがあります。疲労はたいてい健康な人よりもはるかに激しく、はるかに長く続きます(「労作後倦怠感」)。

CFSを持つ人たちやFMを持つ人たちの疲労には原因がたくさんあります。一つは疾患そのもので、疾患のせいでCFSを持つ人たちやFMを持つ人たちは日常活動をするエネルギーがほとんどありません。他の原因として次のものがあります。

 
  無理のし過ぎ   「エネルギーエンベロープの外」で生活している  
疼痛 疼痛による慢性的な不快感が筋肉の張りを引き起こして疲れます
睡眠不足 多くの場合回復睡眠でないので、疲労感がさらにひどくなります
活動しないこと 活動量が少ないと運動不足になり、活動がより疲れるようになります
ストレス ストレスは心配や筋肉の張りを引き起こします
憂鬱 憂鬱は倦怠感を引き起こします
栄養不足 食欲がなかったり、消化不良があったりすると元気がなくなります
薬の副作用に疲労が含まれます
 

上の各原因に合わせて、疲労と闘う七つの方法があります。もしあなたが疲労に悩んでいるのならば、疲労管理計画を立てる土台として以下のアイデアを使ってください。

ペーシング

おそらくCFSとFMの疲労など主要症状(不眠・疼痛・認知的問題)をコントロールするいちばん重要な秘訣(ひけつ)は、自分の活動量を、疾患が課した制限に合うように調整することでしょう。これはよく「エネルギーエンベロープの中で生活する」、あるいはペーシングといいます。体と闘ってプッシュ・アンド・クラッシュの循環を経験するのではなく、自分の体の新たな条件を理解し、その条件内で生活しようと努めます。ペーシングには、優先順位を設定する、休憩時間を導入する、1回の活動時間を短くする、重度と軽度の作業を交互にする、予定表に従って生活するなどの戦略があります。

一人ひとりの制限は、主に疾患の重さによって異なるでしょう。 Paul Cheney 博士はこの取り組みを「常に一人ひとりに合わせて適切に制限を設定することが改善の秘訣です」とうまく要約します。このトピックの詳細は第3部を読んでください。

ペーシングのもう一つの調整は精神的なもので、生活が変わってしまったことを受け入れ、人生を新しい視点で見ることを学びます。この受け入れは諦めではなく、今までと違う種類の生活を送る必要があることを認めて、疾患が課した制限を守ります。我々のプログラムの一人の言葉を借りれば「元気になるには、自分の体がストップあるいは速度を落とすように命ずるときに、自分の体が発するシグナルを無視しようとすることから、シグナルを注意して聞くまでの考えの転換が必要です」。制限を受け入れて違う種類の生活を送れるようになるまでは通常数年かかり、第26章で扱うように喪失を受け入れる必要もあります。

疼痛・睡眠不足を治療する

疲労は疼痛や睡眠不足で強まります。疼痛は本来疲れるもので、また筋肉の張りをよく引き起こし、それが今度は疲労を強めます。非回復睡眠では、朝は寝る前と同じくらい疲れたままです。前の二つの章で説明した戦略を使って疼痛と睡眠不足を治療することにより、同時に疲労軽減のボーナスがもらえます。

疲労と疼痛、疲労と睡眠の関係はそれぞれ反対方向にも作用します。疲労の治療は睡眠と疼痛にプラスの効果があります。疲れを感じると疼痛が強まるので、疲労を少なくすると疼痛を軽減できます。つまり、疲労、疼痛、睡眠はお互いに影響し合います。一つの症状を改善すると、他の二つの症状にプラスの効果があります。おそらく最初に取り組む症状としていちばん多いのは睡眠でしょう。

運動する

もし病気のせいで活動量が減ったり運動不足に陥ったりしているのなら、運動することによって逆方向にねじを回せるかもしれません。運動すると、より高いレベルの健康状態を保てるので、活動しないことが原因で起こる疲労を減らせます。また運動は疼痛治療やストレス軽減、気分向上にも役立ちます。詳しくは第16章を見てください。

ストレスを軽減する

第18章で概説するリラクセーションなどのストレス管理戦略を使うことによって、ストレスからくる疲労と闘うことができます。ストレスは慢性疾患の中に蔓延(まんえん)している問題なので、そしてストレスが疲労だけでなく疼痛や睡眠不足となどの症状を強めるので、多くの患者がさまざまな戦略を使ってストレスと闘います。他の自己管理戦略と同様に、ストレス管理の技術は多くの症状を改善します。

憂鬱などの感情に対処する

憂鬱などの激しい感情は慢性疾患の一部で、慢性疾患がもたらした中断や喪失、不確実性に対する反応です。感情は、自己管理戦略、専門家の助け、そして薬の服用を組み合わせて治療できます。詳しくは第19章を見てください。

栄養摂取を改善する

CFS患者およびFM患者は適切な栄養を取ろうとしてしばしば数種類の問題を経験します。第一に、エネルギーの制約があったり、食欲がなかったり、症状が深刻だったりするため、バランスのとれた食事を調理して食べるのに十分な時間をかけられない者もいるかもしれません。助けを呼ぶ、前もって食事を冷凍保存しておく、調理済み食品を使うなどが役に立ちます。

第二に、CFSを持つ人たちとFMを持つ人たちのほとんどがアルコール不耐性を経験し、多くの人たちがカフェインや甘味料に敏感です。これら物質の摂取量を減らすか、あるいは摂取しないことによって、症状や気分変動が減り、睡眠も改善されるかもしれません。

最後に、CFS患者の約3分の1と同程度のFM患者がさまざまな食品に対して過敏であったり、栄養素を吸収するのに苦労したりしています。食物アレルギーを抑える最も効果的な戦略は「除去食」です。食物アレルゲンとなる食品目を食事から取り除いて、そのあと耐性があったら一つずつ再導入していきます。栄養摂取の詳細については第17章を見てください。

薬の変更を検討する

多くの薬、例えばいくつかの抗鬱薬や疼痛の処方薬などは副作用として疲労感を生じます。薬の変更、あるいは服用量の変更が役立つかもしれません。

更新日:2019年5月5日

pagetop

inserted by FC2 system