慢性疲労症候群(CFS)入門

診断基準

旧厚生省CFS研究班の平成4年の慢性疲労症候群(CFS)診断基準試案が 長らく使われてきたが、いくつかの診断指針の策定を経て平成24年にCFS診断基準が発表され、平成25年3月に改定された。

慢性疲労症候群(CFS)診断基準 (平成25年 改定)(簡易版)

この診断基準は、6カ月以上持続ないし再発を繰り返す原因不明の全身倦怠感を訴える患者に対する慢性疲労症候群(CFS)診断基準である(以下、持続する全身倦怠感を慢性疲労と称する)。

(1)下記の慢性疲労症候群(CFS)臨床診断基準(表1)の前提Ⅰ、Ⅱ、Ⅲを満たしたとき慢性疲労症候群(CFS)と診断する。
(2)CFSと診断された患者に対して、感染症後の発病が明らかな場合は感染後CFSと診断する。
(3)気分障害(双極性障害、精神病性うつ病を除く)、身体表現性障害、不安障害、線維筋痛症などの併存疾患との関連を次のように分類する
 A群:併存疾患(病態)をもたないCFS)
 B群:経過中に併存疾患(病態)をもつCFS
 C群:発病と同時に併存疾患(病態)をもつCFS
 D群:発病前から併存疾患(病態)をもつCFS
(4)前提Ⅰ、Ⅱ、Ⅲのいずれかに合致せず、原因不明の慢性疲労を訴える場合、突発性慢性疲労(Idiopathic Chronic Fatigue:ICF)と診断し、経過観察とする。

表1 慢性疲労症候群(CFS)臨床診断基準

前提Ⅰ 病歴、身体所見、臨床検査を精確に行い、慢性疲労をきたす疾患・病態を除外するか、経過観察する。また併存疾患を認める
ⅰ 6カ月以上持続ないし再発を繰り返す疲労を認める(CFS診断に用いた評価期間の50%以上認める)
ⅱ CFSを除外すべき主な器質的疾患・病態∗1
(1) 臓器不全(例:肺気腫、肝硬変、心不全、慢性腎不全など)
(2) 慢性感染症(例:AIDS、B型火炎、C型肝炎など)
(3) リウマチ症、および慢性炎症性疾患(例:SLE、RA、Sjöogren症候群、炎症性腸疾患、慢性膵炎など)
(4) 主な神経系疾患(例:多発性硬化症、神経筋疾患、癲癇、あるいは疲労感を惹き起こすような薬剤を持続的に服用する疾患、後遺症をもつ頭部外傷など)
(5) 系統的治療を必要とする疾患(例:臓器・骨髄移植、がん化学療法、脳・胸部・腹部・骨盤への放射線治療など)
(6) 主な内分泌・代謝疾患(例:下垂体機能低下症、副腎不全、甲状腺疾患、糖尿病など)
(7) 原発性睡眠障害:睡眠時無呼吸、ナルコレプシーなど。
(8) 双極性障害、統合失調症、精神病性うつ病、薬物乱用・依存症など
ⅲ A.下記の患者に対しては、当該病態が改善され、慢性疲労との因果関係が明確になるまで、CFSの診断を保留にして経過を十分観察する
(1) 治療薬長期服用者(抗アレルギー薬、降圧薬、睡眠薬など)
(2) 肥満(BMI>40)
  B.下記の疾患については併存疾患として取り扱う
(1) 気分障害(双極性障害、精神病性うつ病を除く)、身体表現性障害、不安障害
(2) 線維筋痛症、過敏性腸症候群など機能性身体症候群に含まれる病態
ⅳ 下記の臨床検査を基本的検査として行い、器質的疾患を除外する
(1) 尿検査
(2) 便潜血反応
(3) 血液一般検査(WBC、Hb、Ht、RBC、血小板、末梢血液像)
(4) CRP、赤沈(またはシアル酸)
(5) 血液生化学(TP、タンパク分画、TC、TG、AST、ALT、LD、γ-GT、BUN、Cr、尿酸、血清電解質、血糖)
(6) 甲状腺検査(TSH)
(7) 心電図
(8) 胸部単純X線撮影
前提Ⅱ 以上の検索によっても慢性疲労の原因が不明で、しかも下記の4項目を満たすとき
(1) この全身倦怠感は新しく発症したものであり、発症の時期が明確である
(2) 十分な休養をとっても回復しない
(3) 現在行っている仕事や生活習慣のせいではない
(4) 疲労・倦怠の程度は、PS(performance status:別表1)を用いて医師が評価し、3以上(疲労感のため、月に数日は社会生活や仕事ができず休んでいる)のものとする
前提Ⅲ 下記の自覚症状と他覚的所見10項目のうち5項目以上認めるとき
(1) 労作後疲労感(労作後休んでも24時間以上続く)
(2) 筋肉痛
(3) 多発性関節痛。腫脹はない
(4) 頭痛
(5) 咽頭通
(6) 睡眠障害(不眠、過眠、睡眠相遅延)
(7) 思考力・集中力低下
 
以下の他覚的所見(3項目)は、医師が少なくとも1カ月以上の間隔をおいて2回認めること
(8) 微熱
(9) 頸部リンパ節腫脹(明らかに病的腫脹と考えられる場合)
(10) 筋力低下
∗1  但し、治療などにより病態が改善している場合は経過観察とし、1年間(がん、主な神経系疾患、双極性障害、統合失調症、精神病性うつ病、薬物乱用・依存症などは5年間)以上にわたって疲労の原因とは考えられない状態が続いている場合は除外しない:例えばコントロール良好な内分泌・代謝疾患、睡眠障害など

別表1 PS(performance status)による疲労・倦怠の程度


0: 倦怠感がなく平常の生活ができ、制限を受けることなく行動できる
1 通常の社会生活ができ、労働も可能であるが、疲労感を感ずるときがしばしばある
2: 通常の社会生活はでき、労働も可能であるが、全身倦怠のため、しばしば休息が必要である
3: 全身倦怠の為、月に数日は社会生活や労働ができず、自宅にて休息が必要である
4: 全身倦怠のため、週に数日は社会生活や労働ができず、自宅にて休息が必要である
5: 通常の社会生活や労働は困難である。軽作業は可能であるが、週のうち数日は自宅にて休息が必要である
6: 調子の良い日には軽作業は可能であるが週のうち50%以上は自宅にて休息している
7: 身の回りのことはでき、介助も不要ではあるが、通常の社会生活や軽労働は不可能である
8: 身の回りのある程度のことはできるが、しばしば介助がいり、日中の50%以上は就床している
9: 身の回りのこともできず、常に介助がいり、終日就床を必要としている

参考文献
[1] 橋本信也:慢性疲労症候群の新しい診断指針. 治療 90:444-448, 2008.
[2]平成24年度厚生労働科学研究障害者対策総合研究事業(精神の障害/神経・筋疾患分野).自律神経機能異常を伴い慢性的な疲労を訴える患者に対する客観的な疲労診断法の確立と慢性疲労診断指針の作成
(http://www.fuksi-kagk-u.ac.jp/guide/efforts/research/kuratsune/h24houkoku.html)
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 1984年の米国ネバダ州における集団発生に対して、1988年に診断基準(working case definition)が設定された。これが、その後世界中で原因不明の慢性的な疲労患者を診察する際に広く使われるようになったCDCのHolmes診断基準である。現在世界中で最も広く用いられている診断基準は、CDCが1994年に発表したFukuda診断基準(The 1994 Case Definition) である。

CDC改訂 CFS診断基準(簡易版)

 Fukuda K et al: Ann Intern Med(1994)
 (CDC=米国疾病予防センター)

 Prolonged Fatigue(長引く疲労):1カ月以上続く疲労
 Chronic Fatigue(慢性疲労):6カ月以上続くまたは出没する疲労
I:Chronic Fatigue Syndrome(CFS):
  (a・b)の条件を共に備える場合

(a) "慢性疲労"が下記の条件を満たす場合
 ア) 臨床的に新しい明確な発症である
 イ) 現在続いている労作の結果ではない
 ウ) 休養で改善されない
 エ) 職業・教育・社会・個人における活動力の以前に比べての低下(50%以上)
(b) 以下の症状の4つ以上が同時に存在する
 (症状は6カ月以上持続または繰り返し、疲労発現前にはないこと)
 ア) 24時間以上続く労作後の倦怠感
 イ) 睡眠で回復しない
 ウ) 短期記憶または集中力の重大な低下
 エ) 筋肉痛
 オ) 発赤・腫脹のない関節痛
 カ) 新しいタイプまたはパターン、強さの頭痛
 キ) 頸部または腋窩部のリンパ節の圧痛
 ク) 頻度の高いまたは繰り返す咽頭痛

II:Idiopathic Chronic Fatigue(突発性慢性疲労[ICF]):
  原因不明の"慢性疲労"があり、CFSの基準を満たさないもの


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 Fukuda診断基準を基にして、いま各国がそれぞれの診断基準を設定している。ここでは、カナダのCFS診断基準を紹介する。

カナダ臨床診断基準(簡易版)2003年

 
初診時にME/CFSかどうか診断するために、このチェックマーク表を使用するのを推奨します。
(注意:下に示される1節から6節のすべてに該当しなければなりません)
1) 労作後の倦怠感と疲労:
(この節のすべての診断基準に該当しなければなりません)
 a) 活動レベルを実質的に下げる、原因不明の持続性または再発性の身体的・精神的な疲労による過度の発症があった
 b) 労作後の疲労や倦怠感、痛み、そして回復時間の遅延(回復するのに24時間以上かかる)がある
 c) 労作やどんな種類のストレスでも症状が悪化する
 
2) 睡眠障害:
(この診断基準に該当しなければなりません)
  良質でない睡眠や睡眠パターンの変化(概日リズム障害など)がある
 
3) 痛み:
(この診断基準に該当しなければなりません)
  節腫脹の炎症反応または発赤などの臨床上の証拠がない関節痛や筋肉痛、あるいは新しいタイプまたはパターン、強さの頭痛がある
 
4) 神経/認知の症状:
(次の診断基準の2つ以上に該当しなければなりません)
 a) 集中力低下と短期記憶喪失
 b) 情報処理や情報分類、情報検索の困難。間欠性失読症など
 c) 過負荷の現象と思われるもの:情報や認知、知覚の過負荷(例えば、羞明や音過敏)。または、ぶり返しや不安をもたらすような感情的な過負荷
 d) 知覚/感情の障害
 e) 見当識障害または錯乱状態
 f)
運動失調
 
5) 自律神経系/神経-内分泌/免疫の症状:
(次の3つのカテゴリーの中で少なくとも2つ。少なくとも1つの症状に該当していなければなりません):
 A) 自律神経の症状:
 1) 起立不耐症(例えば、神経調節性低血圧(NMH))
 2) 体位性起立頻脈症候群(POTS)
 3) めまいや頭のふらつき
 4) 極端な蒼白
 5) 過敏性腸症候群(IBS)、または膀胱機能障害に起因しない腸または膀胱の障害
 6) 心不整脈に起因しない動悸
 7) 血管運動不安定
 8) 呼吸不整
 B) 神経-内分泌の症状:
 1) 安定した体温自動調節の損失
 2) 暑さ/寒さの不耐性
 3) 食欲不振や異常な飲食、体重変化
 4) 低血糖
 5) 適応性とストレス耐性の損失、ストレスと回復の遅さによる症状の悪化、情緒不安定
 C) 免疫の症状:
 1) リンパ腺の圧痛
 2) 再発するのどの痛み
 3) インフルエンザに似た症状や全身倦怠
 4) 新しいアレルギーの発症または古いアレルギーの状態変化
 5) 薬品や化学薬品への過敏症
 
6) 疾患が少なくとも6カ月間続く
(この診断基準に該当しなければなりません)

共存する病状
CFSは次の症状と共存類似することがある:
  繊維筋痛症
  多種化学物質過敏症
  過敏性腸症候群
  うつ病
  不安障害
  身体表現性障害

除外基準
次は除外する必要があるかもしれない病状(鑑別診断)の実例である:
  甲状腺機能低下症
  甲状腺機能亢進症
  糖尿病
  アジソン病
  セリアック病
  貧血症
  血色素症
  全身性エリテマトーデス
  リウマチ性多発性筋痛
  サルコイドーシス
  多発性硬化症
  パーキンソン病
  睡眠時無呼吸症候群
  重症筋無力症
  ミオパシー
  悪性腫瘍
  高カルシウム血症
  ライム病
  慢性肝炎
  HIV/エイズ
  繊維筋痛症
  大うつ病
  不安障害
  身体表現性障害

慢性疲労症候群という言葉は、患者らが単なる過労であるという印象を与えます。しかし、疲労は多数の症状の中の一つに過ぎません。




  その他

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